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Published: 26 February 2023

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私なりのケモノの描き方 その1

暴蜻

はじめに

先日開催されたJMoF 2023では、イラストコンテストも行われていました。例年イラストのテーマが設定される形で開かれており、プロやアマチュアを問わず幅広い参加者を集めています。このコンテストに私は初めて応募しましたが結果は落選……テーマに沿った内容を表現して票を得ることの難しさを実感することになりました。しかし、投票した一部の方々からコメントをもらうことができ、今回の参加が非常に意義深いものであると実感するとともに、コメントをくださった方々には感謝してもしきれないという想いでいっぱいです。

さて、JMoF 2023が閉幕してから一ヶ月ほどが経ち、今回応募した絵がどのようにしてできあがったのか、備忘録に近い形で振り返ってみようと思い立ちました。2023年2月時点での情報なので、今後描き方が変化する可能性についてはご了承ください。また、ここで紹介する絵の描き方は、あくまで個人の一意見として捉えていただけると幸いです。

絵のテーマ決め

一枚絵を描く際に心掛けていることがあり、それは「面白い絵」にするということです。ここでは、見た人が少しでも心動かされる絵を「良い絵」としましょう。絵に面白さを出すためには、何を伝えたいのかハッキリさせることが重要になります。これを無しにして描こうとすると、印象がぼやけてしまい心に残らない絵になってしまいます。

今回のイラストコンテストでは「時間」というテーマが与えられました。これをもとに様々な案を出していくのですが、例えば、時間にまつわる物といえば時計だし、漫画も時間経過を表すし、学生という存在自体も……といった具合にアイデアをひねり出していきます。場合によってはこれが一番大変なのかもしれません。私はこれがなかなか思いつかず、提出の締め切りギリギリになってしまいました。最終的な絵の内容は「課題の提出締め切りに追われるケモノの大学生」となります。

下描き(アタリ)

描画ソフトを立ち上げて下描きを描き始めるのですが、まずパース線を引きます。今回はパース線を引かずに描きましたが、あらかじめ用意しておいたほうが絵に説得力が増します。また、より難しい構図にも挑戦できるでしょう。

不透明度30%ぐらいで。これはあおり構図を想定したものですが、パース線を用意することで目線の位置と消失点がハッキリとします。

次に、キャラの顔にあたる円と体幹にあたる線を引きます。ここでの線の引き方が、この後のキャラがとる姿勢を決定することになるので何度も引き直ししてみましょう。

キャラの頭の部分と体幹を決定しました。これをもとにラフ画を描いていきます。

この次に、キャラの胸部と腰の部分に当たる2つの円を描きたして動きをつける工程がありますが、データが残っていないため割愛します。

下描き(ラフ画)

次にラフ画を描いていくのですが、最終的に見せるのはこの後に描く線画のほうなので完璧に描きこむ必要はないです。ですので、ある程度汚くても大丈夫なはず、線画を描くときの自分がカバーしてくれるので……ちなみに、ケモノにおいて顔は命。よく紹介される十字線を引いて、目鼻口の位置を微調整していきましょう。(十字線は顔を描きこむ途中で消してしまうので、データには残ってませんでした……)また顔の中で特に重要なの描き方ですが、様々な方法が紹介されているので割愛します。

キャラと背景は別レイヤに分けて描きますが、座った体勢なので机と椅子も合わせて描いています。

線画

次に線画ですが、人によって描き方がそれぞれ異なります。今回は紺色で10~20pxとしました。少し太めですが、ポップ調な絵柄を目指すので、これで線画がハッキリと強調されます。バケツ塗りを想定しているので線画を閉じるようにし、はみ出した線画のささくれ部分については、地道に消していきましょう。

出来上がった線画。アニメ塗りのポップ調であれば色塗りをそこまで重視しないので、この時点で全体のうちの半分は完成したと言えます。

色塗り

これも目指す絵柄によって異なりますが、バケツ塗りが基本になります。キャラの色をつけていきますが、だいたいの色で構いません。途中で違和感を感じても、デジタルなので後から色を直せるからです。

色をのせた状態。この段階で少し違和感があっても、背景の色次第で印象が変わってくるので迷わず次の工程に進んでいくといいかと思います。

次に、地面に落ちる影とキャラの表面にできる陰を描きこみます。どちらも色は濃い紺色とし、不透明度を30%ほどとしました。目の描きこみについては省略します。陰を入れる際にぼかしを多用すると絵の印象がぼやけて野暮ったくなってしまうので注意します。

最低限の陰をくっきりと入れることで、垢抜けた印象になります。

次にハイライトを入れていきます。主に陰と反対の表面部分に、白で線画をなぞるようにして入れます。不透明度は90%としました。毛並みを表現するために、ほかの部分にもハイライトを入れます。

ハイライトを入れた状態。こちらもくっきりとさせることで、ポップな印象を与えます。

背景

テーマに沿った背景を描いていきます。今回は漫画のコマ、時計、木目、数式、ある物理学者の名言などを盛り込みました。

時間に関わる要素を取り入れて、画面を華やかにしていきます。

仕上げに、キャラを強調するために白いぼかしを入れて、キャラの毛並みにも描きこみを入れます。出力後、レベル補正などによって調整することがあります。長くなりましたがこれで完成しました。

おわりに

イラストコンテストでは、自分が普段行っている描き方を前面に押し出したほうが好印象……なのかもしれません。無理に取り繕わず、ありのままの自分の描き方を見せたほうが、より「面白い絵」につながるのかもしれません。今回のJMoFでは他の人の作品と見比べることで、表現の違いを感じることができたのも興味深い発見でした。

次回も参加してみたいです。来年は辰年だから、ドラゴンにしようかなぁ……。